~かつてないほど最高の主人公とともに迎えた2026年~
周辺情報
- 作品名『成瀬は天下を取りにいく』
- 著者:宮島 未奈(みやじま みな)(敬称略)
- 出版社:新潮社
- 刊行日:2023年3月17日(単行本)
- ジャンル:青春小説、連作短編集
- 舞台:滋賀県大津市(膳所・京都・西武大津店跡地等)
成瀬あかりが動き出す、その舞台裏
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
そんな突飛な一言から始まった物語が、これほどまでに僕たちの、そして多くの読者の心を揺さぶるとは誰が想像したでしょうか。
物語の舞台は、滋賀県大津市。中学2年生の夏、閉店を間近に控えた西武大津店を前に、主人公・成瀬あかりの物語が動き出す。
あらすじ
成瀬あかりの挑戦は、常に予想の斜め上を行きます。
毎日西武大津店に通い詰め、ローカル局の生中継に映り込む。そんな奇妙な「西武に捧げる夏」が終わっても、彼女の勢いは止まりません。
- 幼馴染の島崎と漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成し、M-1グランプリに挑む。
- ある日突然、坊主頭になって周囲を驚かせる。
- 自分の信じた道を、一切の迷いなく突き進む。
本作は、成瀬自身の視点ではなく、彼女に振り回され、影響を受けていく周囲の人々の視点で描かれる連作短編形式をとっています。一見すると「変な子」に見える成瀬。
しかし、読み進めるうちに僕たちは気づかされます。彼女ほど自分の人生に対して、そして周囲の人々に対して「真摯」に向き合っている人間はいないのだと。
視点の変化が描く、成瀬あかりという「立体」
本作の構造でとにかくお見事なのは、物語の前半は成瀬に近い人物、後半は少し距離のある人物へと視点が移り変わっていく点です。
しかも、各章が「その語り手固有の文体」で綴られています。
直接成瀬の頭の中を覗くのではなく、多種多様な他者の目を通すことで、成瀬の輪郭が多角的かつ立体的に浮き彫りになっていく。この手法が、彼女という存在をより鮮烈に、そして神秘的にすら感じさせてくれます。
そして、愛すべき「島崎」への衝撃
個人的に、どうしても触れておきたいのが幼馴染の島崎の存在です。
実は、読み始めてしばらくの間、勝手に島崎のことを「男の子」だと思い込んでいたので、その事実を知った時の衝撃といったらありませんでした。(一番びっくりしたかもしれない)
しかし、読み終えた今なら確信を持って言えます。
「島崎、信じてたぞ!!!!」
成瀬という突飛な恒星のそばで、時に振り回され、時に面白がりながら、一番近くでその輝きを観測し続けた島崎。彼女という最高の相棒がいたからこそ、成瀬はこれほどまでに自由に、天下を取りにいくことができたのだと感じます。
なぜ、成瀬あかりは最高の主人公なのか
成瀬あかりという人物を語る際、登場人物たちは「変人」や「天才」といった言葉を使います。しかし、僕が彼女に「かつてないほど最高の主人公」という称号を贈りたい理由は、もっと別のところにあります。
それは、彼女が「自分の人生を、これ以上ないほど自由に生きている」からです。
何ものにも縛られない、本当の「自由」
僕たちが生きる現代社会は、常に「他人の目」や「空気」に支配されがちです。
SNSを開けば誰かの評価が目に入り、無意識のうちに「こうあるべき」という目に見えない枠の中に自分を閉じ込めてしまう。
自由を選んでいるようで、自由を選んでいない、そんな気分が漂っています。
しかし、成瀬にはその枠がありません。
彼女にとっての「自由」とは、単に好き勝手に振る舞うことではなく、「自分の心の声に対して、どこまでもでも真摯たること」なのだと感じます。
「やりたいから、やる」。そのシンプルな動機を、彼女は一切の虚飾なく実行に移します。他人の物差しではなく、自分の物差しで世界を測り、自分の足で一歩を踏み出す。その迷いのない「自由」な姿こそが、僕たちに圧倒的な憧れとして映るのです。
誠実さが生む、圧倒的な肯定感
成瀬の行動には「嘘」がありません。
自分を大きく見せようとしたり、自分を偽って誰かに合わせたりすることもない。ただ、目の前の物事に真っ直ぐに向き合う。
その究極の誠実さは、彼女の周囲にいる人々だけでなく、読んでいる僕も虜になりました。
「自分も、もっと自由に生きていいのかもしれない」。
成瀬という光に照らされることで、僕は自分自身の人生を肯定する勇気をもらえました。
成瀬あかりというブレない軸と、軽やかな自由を持った主人公に出会えたことは、僕たちが「自分自身の人生」を自分らしく歩むための、大きな道標になると確信しています。
2026年、成瀬の軌跡を追いかけて
2026年、物語の完結編を経てなお、成瀬あかりという存在は僕たちの中で鮮烈に生き続けています。
活字の中で誰よりも真っ直ぐに、そして自由に生きる彼女の姿。それは、物語と現実がリンクするこの2026年という特別な年に、改めて「自分はどう生きたいか」を問いかけてくれる道標のようです。
もし、まだ成瀬に出会っていない方がいれば、ぜひその扉を開いてみてください。
「自分らしく生きる」ことが難しく感じられるこの時代に、成瀬の突き抜けた誠実さは、きっとあなたの心に新しい風を吹かせてくれるはずです。
成瀬あかりが天下を取りにいく姿を、これからも僕たちは信じて、それぞれの場所で見守り続けたいと思います。
島崎、これからもよろしくな!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
2026年最初に読むことができた本当に素晴らしかった成瀬の物語、ぜひあなたも手に取ってみてください。


どうも、天下を目指し始めたひつじです。
今年最初に読んだ本『成瀬は天下を取りにいく』を紹介します。